「楓、これを覚えているだろう」
彼の胸元の内ポケットから取り出されたのはあのバスルームで見つけたハート型のもの。
桜色のとても良い香りがするものだったけれど、今クリフ様の手のひらにあるものはほぼ透明で色が付いていない。
それを指先でつまんで私の目の前に差し出している。
「楓、これに触ってみてごらん」
言われるがままに右手の人差し指でそっと触れると、不思議なことにそれがじわじわと桜色に色づいていくのがわかる。
「手に乗せて握って」
手のひらに乗せられたそれを壊さないようにそっと握ると、今度は手の中からあの香りが漂ってきてどんどん濃くなってくる。
驚いて手を開くと、ほんのり桜色だったそれは濃いピンク色になっていて、香りは更に強くなり甘く胸を刺激してくる。
「それは私の鱗なのだ」
うろこ
ーーああ、彼は竜だから鱗を持っているのか。
「番以外のものが触れても鱗の色は変化しないし、香ることもない。それは竜族のものなら誰でも同じことだ。鱗は番にしか反応しない」
番が触れると色が変わって香りが出る。
「まさか、それを試すために鱗をバスルームにわざと忘れていったとか」
「いや、そうではない。普段人型でいるときに鱗が剥がれることはないし、そもそも鱗はよほどのことがない限り剥がれないんだ。
考えられるのは私より先に番の存在に気が付いたそれがわざと楓の目につくように私から離れたのではないかということだがーーー私も初めてのことだけに確証はない」
鱗が自ら剥がれてバスルームに居残ったなんて何の冗談だと思うけど、彼が嘘をついているようにも見えない。
彼の胸元の内ポケットから取り出されたのはあのバスルームで見つけたハート型のもの。
桜色のとても良い香りがするものだったけれど、今クリフ様の手のひらにあるものはほぼ透明で色が付いていない。
それを指先でつまんで私の目の前に差し出している。
「楓、これに触ってみてごらん」
言われるがままに右手の人差し指でそっと触れると、不思議なことにそれがじわじわと桜色に色づいていくのがわかる。
「手に乗せて握って」
手のひらに乗せられたそれを壊さないようにそっと握ると、今度は手の中からあの香りが漂ってきてどんどん濃くなってくる。
驚いて手を開くと、ほんのり桜色だったそれは濃いピンク色になっていて、香りは更に強くなり甘く胸を刺激してくる。
「それは私の鱗なのだ」
うろこ
ーーああ、彼は竜だから鱗を持っているのか。
「番以外のものが触れても鱗の色は変化しないし、香ることもない。それは竜族のものなら誰でも同じことだ。鱗は番にしか反応しない」
番が触れると色が変わって香りが出る。
「まさか、それを試すために鱗をバスルームにわざと忘れていったとか」
「いや、そうではない。普段人型でいるときに鱗が剥がれることはないし、そもそも鱗はよほどのことがない限り剥がれないんだ。
考えられるのは私より先に番の存在に気が付いたそれがわざと楓の目につくように私から離れたのではないかということだがーーー私も初めてのことだけに確証はない」
鱗が自ら剥がれてバスルームに居残ったなんて何の冗談だと思うけど、彼が嘘をついているようにも見えない。



