「とにかくとりあえずクリフォード様にお電話をしてみてちょうだい。まだお近くにいらっしゃるかもしれないし」

はいと返事をしてオフィススペースに小走りで戻り、顧客リストからクリフォード様の連絡先を探す。

クリフォード・・・あった。
クリフォード・D・ギヴォンズ様

登録された番号をタップすると、「はい」と低く重々しい声で返事があった。

「こちらは住宅機器のシャボットでございます。クリフォード様のご連絡先でよろしいでしょうか」

「はい、こちらはクリフォード・D・ギヴォンズの秘書のダニングですが」と重々しい声で返事があった。

「先ほどはご利用いただきましてありがとうございました。早速ですが、2センチほどの大きさで半透明の板状のものをお忘れ物ではないかとご連絡させていただきました。薄いピンク色のハート型の物ですが、クリフォード様のものではございませんか?」

私の問いかけに一瞬の間があった。

「---それはどこに?」

「ご利用いただきましたバスルームのミラーのところにございましたが」

「・・・もう一度色の確認をさせていただいても?」

「薄いピンク色です」

途端に電話の向こう側で複数の男性の話し声が聞こえると、
「・・・こちらのもので間違いありません。申し訳ありませんが、できるだけ人目に付かないように預かっていていただけませんか」

人目につかないようにだなんてやはり大切なものだったみたい。