ベッドから下りて着替えをしろということなのかなと判断して、差し出された手を断るのも何なので「ありがとうございます」とおとなしく手を取ってもらいベッドを降りた。

「え、えーっと、わたしの服は?」

ベッドに置かれたものはよく見るとずいぶんと高級そうでしかも布地が多い。
ワンピースなどというものではなくてこれはドレスというものじゃないだろうか。

「楓様のお召し物はこちらでお預かりしてクリーニングしておりますので、どうぞこちらにお召し替え下さいませ」

いやいやいやいや
何だろう、ピアノの発表会でもこんなドレスは着たことがない。

おとぎ話のお姫様みたいなふわふわな袖と裾。この部屋のアンティーク調のインテリアとは合っているけれど。

「・・・こちらの国では皆さんこのようなお洋服が常識なんでしょうか?」

「はい、もちろんでございます」

侍女さまはニコリと笑ってドレスに目線を向けてくる。
有無を言わさず・・・って感じでちょっと負けてしまう。

そもそもがなんかいろいろ負けてるんですよね。
ここに来る時は無理やりだったから私も仕方なく行くんですよなんて、ちょっと上から目線だった。

でも、移動中にぐーぐーと寝込んでしまって時点で相手に対して完全に礼を欠いている。

おまけに目覚めたら中世のお城みたいな雰囲気のあるお部屋の天蓋付きベッドで目覚めましたなんてどんなお伽話なんだか。

後で私を担いで運んでくださった方に謝罪をしなくては。重かっただろうなぁ。