なんとか離れてくれたけれど、この程度なのね。

「座席なら他にもありますけど」と言ってみたけれど「いいえ、私たちは楓さまの護衛ですから」と私の隣という場所だけは譲れないらしいので諦めた。

とりあえず、車が揺れたくらいでは肩が触れ合う距離ではないので一つクリア。


次の疑問はーーー
「ここからクリフォード様のところまでどのくらいですか?」

「そうですね・・・ここから空港に移動してそこから飛行機で5時間。更に乗り換えていただいて・・・」

え?ん?は?
「そんなに遠くーーー」
飛行機で5時間ってかなりですよ、しかもそこから乗り換えてーーって、どこまで行くの?!

「ああ、まあそうですね」

がーん。
衝撃だ。何時間の移動なんだろう。この車だけではなくこの先最低でも2回乗り換えが待っている。
鳥肌が立ってきた。

「楓さま。お顔の色が悪くなってきましたね。ご気分が優れませんか?」

「すみません。私、乗り物酔いをするんです。しかも閉所が得意でなくて」

この先、飛行機に乗せられて5時間監禁だと思ったらぞっとして気分が悪くなってきた。
旅行など長時間の移動の時はいつもなら乗り物酔い止めの薬を飲んで準備しておくのにそれが今回は何もできていない。
そのことで急に不安感が増してしまったのだからもう大変だ。

「・・・・気持ち悪くなりそうです」
私は早々に白旗を上げた。

何せ社長室からそのまま連れ出されている。

「それは大変です」
そう言って秘書さんが運転席寄りの前方に移動して車内に備えてある冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターのボトルを出してくれた。

「大丈夫ですか?楓さま」
護衛さんたちも声をかけてくれる。