「楓さま」

私が入ってきたことに気が付いた金髪の秘書様が立ち上がる。

「は、はいっ」
緊張して声がかすれて指先が震えだす。

いつの間に私のことを楓と名前で呼ぶようになったのだろうかとチラッと思ったけれど、いま口に出して言えるほど空気を読めないわけではない。

社長室の入り口ドアの前から歩き出せずにいる私の元にスタスタと金髪秘書さんが真っ直ぐに歩み寄ってきた。

私の目の前まで来ると、何と彼が片膝を絨毯につけて跪き胸に手を当てた。
そして秘書さんに続いて護衛のお二人も秘書さんの後ろで同じように頭を下げてひざまずいた。

ひぃいー。なにこれ、なにこれ!!
立派な身なりの男性が三人揃って私にひざまずいている!
呆気に取られている私に金髪の秘書さんは頭を下げて恭しく言ったのだ。

「お迎えに上がりました、楓さま」

まるでドラマを見ているような光景に意味が分からず声も出せない。

なにこれ、金髪イケメン中年秘書様にイケメンマッチョ護衛様とイケメン細マッチョ護衛様に恭しく跪かれる私。

今流行りのテレビドラマでもこんなドラマティックな展開はなかったよ?
これは一体どういう事でしょうか???