震えそうになりながら社長室のドアをノックすると、すぐに扉が開いて中から社長秘書の中年男性が顔を出した。

ええ確かにこの人は私の好みではありませんと心の中でシェリルさんに報告するように呟いた。
メガネはかけているけど、年齢も顔も好みとは全く違う。それに気のせいか非常に顔色が悪い。私もなんだろうけど、この秘書さんの方がさらに顔色が悪いだろう。

「秋月さん・・ですね?」

あちらはいち社員の私の顔など認識しているはずもない。名前の確認をされて「はい」と頷いた。

「どうぞ、お入りください」

促されて「失礼します」と一歩踏み出すと室内の様子が目に入った。

何だかたくさんの人がいるーーー。
これ、やっぱりまずい状況なんじゃないだろうか。
既に国際問題になっちゃってるのかも。
どうしよう。

シャボットの社長室のソファーには6人もの人が座っていた。

先日クリフォード様の案内をしてきた政府関係者らしき男性2人ともう1人が硬い表情をしている。

向かいのソファーにはクリフォード様の金髪秘書さんと群青色の護衛さんともう一人見たことのない群青色の髪をした男性が座っていて、この場にクリフォード様はいなかった。

いないと言えば、なぜかうちの社長もいない。ここ、社長室のはずなんだけど。

クリフォード様の護衛さんたちは黒色に銀糸の刺繍がされた軍服を着ていてそれが似合いすぎるくらい似合っている。その雰囲気にこんな時でなければ写真を撮りたいくらいなんだけど。

なぜかうちの社長秘書と政府関係者のピリピリとした空気とは真逆で、彼らは出された紅茶を飲んだりしていてずいぶんと落ち着いた様子である。