「これのせいで楓が苦しんでいたのか」
怒り心頭なクリフ様が後ろにいた誰かを呼んで紫色のボールを渡している。

受け取ったのは白いスタンドカラーの衣を着ているからこの国の神殿の神官だ。
「すぐに浄化します」

クリフ様が頷き、神官は私と両親に向かって跪き一礼すると、素早い動きで護衛騎士に周囲を囲まれるようにして部屋から出て行ってしまった。

呆気に取られているうちに話が進んでいるような気がする。
両親と神官とあの紫の玉。

母が私の肩にそっと手を置く。
「楓、大変だったわね。でも霊水も飲んだしもう大丈夫よ」

父はハアっと息を吐いた。
「竜王陛下に聞いたときは驚いたが、間に合ってよかった。もう呪いは解除されているはずだから安心しなさい」

呪い?
さっきも気になったキーワード。

「呪いって何」

優しく微笑む母とどこかそわそわしながらクリフ様と私の顔を見比べるようにしている父の言っていることがわからない。
「ちゃんと説明して欲しいのだけど」

「いや、先に傷を診ようか」
「そうね、とにかく傷が先よね」
両親はまたもや私の訴えを受け流し、診察の準備をしはじめた。