「相変わらず不味い」

幼い頃から体調を崩すと飲まされていたこの粉薬。
市販されておらず、父が処方するのだけれどどこから手に入れているのか知らないが、自己免疫力を上げるとか、自己治癒力を上げ細胞を活性化すると聞かされていた。
確かに飲むと早く治るような気がするのだ。

でも、何度飲んでも慣れることがなく、毎回間違いなく不味い。

そのうち体調を崩すことが無くなって、ここ5年ほどはご無沙汰していたからなのか余計に不味い。ホントに不味い。

あまりの不味さに顔をしかめながら、
「で、どうしてここに?」
とクリフ様と両親に問いかけた。

久しぶりに会った娘が話しかけていると言うのにうちの両親は私の問いかけを無視して勝手に私の目の下を引っ張りまぶたを見たり脈を取ったりして診察している。

「この霊水で呪いは解除されるはずだけど、どのくらいで効果が出るのかしら」
「すぐにもーーと宮司様は仰っていたが、どうなのだろうな」

両親は私の診察をするだけで、私の問いに対する返事をしてくれない。
隣に立つクリフ様をちらりと見るが、やはり彼も私と両親の様子を窺っていて返事をする気はなさそうだ。

誰か返事をしてくれてもいいと思う。
おまけに”霊水”とか”呪い”とか聞き捨てならない単語があった。

しっかり教えてと口を開こうとしたら・・・何だかむずむずする。
主に耳と鼻と目が。
いやだ、こんな時に花粉症?
ブタクサのアレルギーは持っていたけど、なぜ急に今。

「オリエッタさん、ティッシュペーパー下さい」
むずむずする鼻をこすりながらティッシュを受け取ると同時に「くしょん!」とくしゃみが飛び出した。

うん?
鼻と耳に違和感がーーーと思っていると、みるみるうちに涙があふれてこぼれだした。

その涙をぬぐってギョッとする。
「む、紫っ??」