なるほど、とパメラさんもメイドさんたちも頷いた。

「わたくしたちは知らぬところでも楓さまのお世話になっていたんですね」
パメラさんが真顔で頷いた。

「ううん、私は何もしてないもの。私の両親は”救国の旅人”だけど、私はいたって普通。幼稚園に行って小学校から大学まで普通に進学して就職して」

両親が”救国の旅人”と言っても、私はこちらで生まれた普通の子ども。同じ人間の種族も数多くいるから自分が異世界の人間だと思ったことはなかったし、そもそも両親からちらっと聞いただけの”救国の旅人”なんて言葉も忘れていた。

「もしかしたら”救国の旅人”の子どもは竜王の相手になれないのかしら・・・・」
私は突然不安になってきた。

「だ、大丈夫ですよ、きっと。竜王様の番になにか規定があると聞いたことはありません」

パメラさんはそういうけれど私の不安は拭えない。
竜の血が流れていない私は竜王の子どもを産むことができない可能性が高いしその上この世界の人間でもない。そんな私に竜王の王妃になる資格はないのかも。

私の左胸の鱗の上をそっと押さえて乱れそうになる呼吸をととのえる。
フワッとクリフ様の香りが漂ってくる気がして私はふっと息を吐いた。

大丈夫、それでもきっとクリフ様は私を離さないでいてくれる。
クリフ様と私は離れない。