クリフ様がスッと私を抱いたまま立ち上がった。

「ミーナがお前に宮殿の工事は側室のためだと言ったそうだな」

「うん。自分と過ごすための部屋を作っていると。私は離れの館で前らないあなたをずっと待っていればいいと」

チッと舌打ちしたクリフ様が私を抱いたまま寝室のドアを開ける。

「お前はこの部屋から出ることを許されなかったから知らないだろうが・・・見ろ。ここは婚姻を結んだ後に私とお前が暮らす予定になっている王と王妃の部屋だ」

知らなかった。

そこにあったのは広い応接間。
その奥にはクリフ様の私室。ちなみに私の私室は寝室の反対側にあるのだと言う。
それと、なんとここにもバスルーム。あの離れと同じシャワールームの他にここはジャグジーもミストサウナもある。

私が目を丸くしていると、窓の外を指差した。
「テラスも見るか?」

「今はまだちょっと怖いんだけど」腰が引けてしまい、クリフ様にしがみついた。
「うん、まあそうだろうな。窓の内側からだけにしよう」

テラスも全面改装したらしく、かなり広い。おまけに私が知っている他の部屋より手すりが高く、ちょっとまたぐということはできそうにない。

「すごいわ。すごいです」

「手すりには魔石を組み込むこともできる。魔力を跳ね返すから魔法に操られ乗り越えることはない」

ほぅっと感嘆の声が出てしまう。

「私のため、ですよね?」

「他に誰がいる」

クリフ様のくちびるがそっと額に触れる。

「ありがとうございます」
私は頬を染めてゆっくりと周りを見回した。