あの日の事を話したいと言うとクリフ様の表情が一瞬で引き締まった。

ただ私たちはこの話を避けて通るわけにはいかないのだ。

「あの日、ミーナ様に言われたの。私が感じている恋心はクリフ様の鱗によって操作されたものだって。私それがショックだったし、私ももしかしたらそうかもなんて自信が無くなってしまって」

「そんな事をミーナが」
クリフ様の顔色が変わった。

みるみるうちに彼の周りの温度が下がり始め、冷たい風が流れ出してくるようだ。

「それに、昔からクリフ様とミーナ様は両想いだったのに私が割り込んだせいで王妃から側室になることが決まったって言うし、私には子どもができないし。
死にそうな目にあってわけがわからなくなって…一度鱗を外して考えてみようって決めて」

「それで、結果は?」

「クリフ様の背後にナイフが見えた時、自分のことよりクリフ様を失うことの方が嫌だと思ったの。--あとはもうわかるでしょ」

ふっと笑うと、クリフ様は困ったような泣き出しそうな顔をした。


「アイツに他には何を言われた?」

「あなたに愛してると言われたことがないんじゃないか、とかね。さすがにそれはショックだった。だって本当のことだったしね。番が大事とか、大切にするとかとは言われていたけど、クリフ様からの愛してるの言葉は一度もなかったもの」

私の言葉にクリフ様は難しい顔をして口を開きかける。

「待って、もう少し言わせて。--だから私ね、あなたからのカードを見た時は本当に嬉しかったの」