「今夜はゆっくりできますか?」

今夜こそは話がしたいと、私は早速切り出した。

「ああ、楓のおかげでマルドネスが真面目に仕事に来るようになったからな。今までの分を押し付けてきたよ」

「まあ。それはそれは」

二人で顔を見合わせて笑った。
もともと仕事が出来る方だったらしいからマルドネス様にはこれからたくさん働いていただくことにしよう。

「私も楓不足だった」
人払いしたクリフ様は私を自分の膝の上に座らせ抱きしめた。

いつでも私を惑わせ、安心させるクリフ様の不思議な香りが濃く香ってくる。
すぅーっと吸い込んで小さく息を吐きクリフ様にしがみついた。

厚手の上着を脱いだクリフ様はシンプルなシャツ姿になっていて、触れ合っている場所からはお互いの体温を感じとても心地がいい。しっくりと馴染むとはこんなことをいうのではないだろうか。

私、もう気持ちを吐き出してもいいのかな。
そろそろ限界にきている。

ちらりとクリフ様を見上げると、私の視線に気がついたクリフ様が嬉しそうな笑顔を見せる。

「おねだりかい?私の愛しい番」

甘い囁きに気分を良くした私の頬も緩んでしまう。

彼の胸に自分の顔を押し付けておねだりをすることにした。

「鱗、欲しいです」

あの鱗はナイフで刺されて割れてしまうとその後乾燥したみたいになって壊れてしまった。
だからわたしの心はずっとスースーしている。

「欲しいのか?楓は嫌だったんじゃ?だから外したんだと思ったんだが」

「嫌じゃない。ごめんなさい。その話もしたかったの」

私が鱗を外したことにショックを受けた彼が起こした嵐を思い出す。彼にとってはそれほどの重大事件だったというわけだ。