それからしばらくしてマルドネス様は何度も頭を下げ、アリアナ様は涙を浮かべて部屋を出て行った。
クリフ様も執務に戻り、私はまたベッドに横になった。

「あれでよかったのですか?」
パメラさんがしかめっ面で私に葛湯っぽい薬湯を勧めながら話しかける。

「だって、クリフ様も言ってたでしょ?あんまり関係ないんだもの、あのお二人は。それに、前にね、私に言ってくれたの。”私たちと親戚になろう”って。あれ、嘘じゃなかったと思う。私、マルドネス様のこと嫌いじゃない。
それに、クリフ様の血縁って少ないじゃない。減らすなんてとんでもないわ。私はクリフ様のお子様を産んであげられないんだし」

私がそう言うと、パメラさんは悲し気な表情を浮かべた。

「楓さま、お子様の件はーーー」
「うん、いいに、いいの。本当のことらしいし。竜王は特別なんでしょ。竜王だけは相手が竜とでないと子供ができないって」

実はその件に関してはもう何人かに確認を取っていた。
見舞いに来たヘストンさんやリチャードさま。それと、私の主治医。
皆が口を揃えてそう言っていた。
『残念ながら・・・』って。
それで、歴代の竜王の何人かは側室を設けていたらしい。

でも、私はやっぱり側室は嫌だなあ。
人工授精とか違う方法はとれないのかな。
まだその件に関してはクリフ様と話をしていないんだけど、いずれは伝えないといけない。

それきり黙った私にパメラさんも何も言わなかった。