「ああ、そうだ。妻の侍女に関しても姉から紹介されたのだが、実際は夫の実家の息のかかった女で元は姉の侍女だったがまさかそんなことを企んでいるような女だったとは姉も知らなかったそうだ。
だが、これは知らなかったでは済まされないほどの事態だ」

マルドネス様の隣に座るアリアナ様も真っ白い顔色をして頷いている。

「では、どうされるおつもりなんでしょうか」

「私も姉も死罪を覚悟している。ただアリアナは助けてほしいのだ」

死罪?
私は驚いてクリフ様の顔を見た。
クリフ様は片眉を上げ肩をすくめてやれやれという顔をした。

「何度も言うが、お前が死んでどうなると言うのだ。いい加減にしろ」

「いや、我が家はそれほどまでのことをしたのだ。陛下を殺そうとするなど万死に値する行為だ。楓殿が陛下をかばって下さらなかったらどのようなことになっていたか。いや、それで陛下の唯一である番の楓殿がこのような状態に」
マルドネス様は首を振った。

「ーーとまあこういうわけだ、楓。何とかしてくれぬか?」
困った顔をしてクリフ様が私の手を握る。
ああ、そういうことなんだと私も頷いた。

「クリフォード陛下、わたくしマルドネス様のお姉さまのご家族の処罰に関してはわかりかねますが、マルドネス様の処罰に関しては意見がございます」
私はちょっと背筋をのばしてクリフ様に微笑んだ。

「何だ、言ってみよ」
「はい、ありがとう存じます。マルドネス様は死罪でいいと思います。」

さらりと放った私の言葉にアリアナ様がひゅっと息を飲んだのが目の端に映った。