オリエッタさんが慌てて涙をぬぐっているので
「ちょっと待っててちょうだい」と私が声を張り上げた。

「どうかされましたか?楓さま?」
ドアの向こうでパメラさんと護衛の焦った声がして、何だかこのまま入ってこられそうだなと思って
「何でもないからー、そう、着替え、着替えをしているのよっ」と更に声を張った。

オリエッタさんにウィンクすると、ぎこちない笑顔と「ありがとうございます。楓さま」と小さな声が返ってきた。

いつも通りの表情に戻ったオリエッタさんがドアを開けると、パメラさんが神妙な顔つきで待っていた。

「楓さま、マルドネス様とアリアナ様が面会を希望されていますがどういたしましょうか」

「それってクリフ様はご存知なの?」

「はい、楓さまの好きなようにと」

「なら安心ね。どうぞとお返事してちょうだい。
あ、私着替えた方がいい?応接間に移動?ええと、お茶とかお菓子とか何がいいの?私は下座に座るのよね?ああこの場合、下座ってどこ?」

あわあわとする私にパメラさんが呆れた声を出した。

「楓さま、落ち着いて下さい。お二人はお詫びにこちらにいらっしゃるのです。楓さまはこのままベッドにいて下さいませ」

あ、そうか。

シュンとした私にパメラさんが追い討ちをかける。
「楓さまは一度ならず二度も被害者なんですからねっ。その度に私たちもどんな思いをしたか。あの姫のことだって含めたら三度目ですよっ」

そういえば、パメラさんはあの姫様の暴言現場にいたものね。