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思ったより傷の治りが悪いことと、微熱がひかないことで私の離床はなかなか許されなかった。

「もう痛くないし、高熱になるわけじゃないのに」
3日目には文句を言っていた。

「せめて元通りの食欲になるまではおとなしくして下さいませ」
とオリエッタさんに言われると言い返せない。
なぜか、食欲も全くというほど戻って来ていないから。

クリフ様は時間を見つけては顔を見に来てくれる。
だけど、今回の事件の後始末に忙しいクリフ様となかなかゆっくりと話ができないことも私をイラつかせていた。

そこからさらに4日後。
あれから1週間が過ぎようとしているのに私はまだトイレ以外の歩行すら許されていなかった。

「ここに来てから今までの人生で生きてきたのとと同じくらい寝てる気がするわ」

ここに連れて来られた時と、ここから落とされた時、そして今と。ここに来てから体調不良で寝てばかり。

オリエッタさんはとてもつらそうな顔をした。

「そうかもしれませんね。私たちは楓さまに強いるだけで楓さまはいつもそれに耐えていらして・・・」
そしてついにぽろぽろと涙を流し始めてしまった。

「ああー、いやっ、その、そんなひどいことはないのよ。オリエッタさんったら泣かないで」
私はおろおろしてしまい、不用意な自分の発言を激しく後悔してオリエッタさんの背中をさする。

八つ当たりだよね、これ。バカな自由に動けなくてイライラして余分なことを言ってしまったと思う。

「ごめんね、もう少しごろごろしてるから。ね、ね」
慌てて宥めていると、コンコンっとノックの音がした。