ぐっすりと眠っていたはずだけど、頬を撫でられた気配がしてその余りの気持ちよさにこちらからすりすりとすり寄ってしてしまう。

「楓、目が覚めたか?」
躊躇いがちなその声に私は薄目を開けた。

そっか、あれからひとりで寝かせてもらっていたんだっけ。
ボーっとする頭で「お帰りなさいませ、クリフ様」と声をかけた。

「ああ、その言葉、本当に久しぶりだ」
嬉しそうな声に今度はしっかりと目を開け目の前の人に笑顔を見せた。

「長く家出をしてしまって申し訳ありませんでした」

途端にぎゅっと抱きしめられた。器用に怪我した場所を避けて。

「お帰り、楓。なあ、”お帰り”でいいんだよな?」

「そうですね、とりあえずこの先出て行くつもりはないので」

「楓」

クリフ様の嬉しそうな声と共に額と頬にキスが落ちてきた後、私たちはゆっくりと見つめ合った。

「お帰り、楓」
「ええ、ただいま、クリフ様。そしてお帰りなさい」

そして私たちはまたゆっくりとキスをした。