やれやれ、と息を吐くと侍女たちがクスクスと笑いながら近付いてきた。

「さすがですね、楓さま」
「本当です。相手はあの竜王ですのに」

私は苦笑しながら身体を起こして彼女らに傷のある背中を向けた。

「さあ、早く治療してちょうだい。クリフ様が心配しちゃうから」

「はい、直ちに」私の声に焦ったように医師が駆け寄ってきて手当てが始まった。



ナイフの傷は思ったより深かったらしい。
直後のクリフ様による治療魔法のおかげで治癒に向かっているけれど、もしかしたら傷口の跡が残るかもしれないということだった。

その程度は何の問題ないと私は思うのだけど、侍女やメイドはそれを聞くと一様に表情を暗くした。

「私が気にしていないのにどうしてみんなが気にするのよ」

「だって、楓さまの綺麗なお肌に・・」
涙目でエメが訴える。

「こういうのって”名誉の負傷”っていうのよ。ここに傷があったからって何かが変わるわけじゃないわ。まあ、私が刺されてなくても竜王なら大丈夫だったと思うけどね」

とにかくちょっと寝るわとふかふかの布団をかぶった。

魔力を持たない私は回復魔法が込められた魔石を握らされていた。こんな時、ヴィーのお腹で眠れば早くよくなりそうだなと思ったところではっと気が付いた。

そうだ、ヴィーを忘れてた!

ガバッと身を起こすと、ベッドサイドにいたパメラがギョッとした顔をした。

「楓さま、どうなさいました?!」

「神鳥を忘れてたの!お願い、中庭に行って黄色い鳥に私はしばらくここで休むって伝えてきてちょうだい」

「・・・黄色い鳥でございますか?」

「そう、レモンイエローの変な鳥。その辺にいるはずだから」

「レモンイエローの変な鳥?」

私の言葉にパメラさんは首をかしげて困惑している。