このビルが立ち並び、24時間街は明るく、飛行機が空を飛び、宇宙には人口衛星が多数回ってる今の時代に天上界や天上人など存在するわけがないと思う。

おとぎ話もいいところ。

「でもクリフォード様の漆黒と護衛の方の群青はどうにも気になるわね」

「ですねよぇ」

とはいうものの調べる手段があるわけでもないし、むしろこれ以上関わらない方が良い気がする。初対面でいきなり抱きしめるなんてことをする非常識な人だし。

ただ、クリフォード様もいい香りがした。
あの鱗のような雲母のようなものと同じだった。

宝石というよりは匂い袋のような携帯する特別な香水なのかも知れない。
なぜ色が変わるのかとか分からないことはいっぱいあるけど、クリフォード様はすぐにあれを胸ポケットにしまってしまったからもう見ることはできないだろう。

「私はあの香りが気になって仕方ないんですけど、それも解明できそうにありませんね」

「クリフォード様の入浴体験の予約は入ってないからもうお見えにならない可能性もあるし、例えお見えになっても聞き出せそうにはないわ。
あちらの情報は何も明かしてもらえそうもないんだもの。謎は謎のままね」

残念そうなシェリルさんに私も頷いた。
そうなのだ、これ以上は情報がないのだから考えても仕方ない。

「さあ、明日も早いしそろそろ帰ろうか」

お互い目の前のグラスに残るワインを飲み干して帰り支度を始めた。