気が付いた時には駆けだしていた。
声を出す余裕なんて何もなかった。
私にはクリフ様を突き飛ばすような力などはない。
私にできるのはナイフとクリフ様の間に身体をすべり込ませることだけ。
動け、足。
早く、早く。クリフ様の元へ。
「----うっ!」
感じたのは、熱。
熱い、焼かれた鉄棒でも刺さったんじゃないかって感じ。
でも、私は間に合った。
女がクリフ様の背中に突き立てようとした細いナイフを自分の背中で受け止めることができたのだ。
熱い、背中が熱い。
痛みではなく、それは熱だ。
「かっ、楓ー!」
クリフ様の声が聞こえた。その後はきゃーと言う女性の悲鳴と男性たちの慌てた声。
ああ、あのヤナーバル様にここから落とされた時みたいな騒ぎだなと他人事のように思う。
反対に背中に感じる熱は徐々に痛みに変わっていく。
刺されて崩れ落ちた私の身体をクリフ様が抱きとめる。
「楓、かえでっ。どうしてこんなーー」
私は徐々に強くなる痛みを堪え、私の身体を支えるクリフ様の腕をぎゅっと握り返して視線を上げた。
「ク、クリフさま、お怪我はーーないです、か」
「かえでっ!」クリフ様の綺麗な赤い瞳がゆらゆらと揺れている。
「わ、わたしは、だ、いじょうぶです。しんぱいし、ないで」
声を出す余裕なんて何もなかった。
私にはクリフ様を突き飛ばすような力などはない。
私にできるのはナイフとクリフ様の間に身体をすべり込ませることだけ。
動け、足。
早く、早く。クリフ様の元へ。
「----うっ!」
感じたのは、熱。
熱い、焼かれた鉄棒でも刺さったんじゃないかって感じ。
でも、私は間に合った。
女がクリフ様の背中に突き立てようとした細いナイフを自分の背中で受け止めることができたのだ。
熱い、背中が熱い。
痛みではなく、それは熱だ。
「かっ、楓ー!」
クリフ様の声が聞こえた。その後はきゃーと言う女性の悲鳴と男性たちの慌てた声。
ああ、あのヤナーバル様にここから落とされた時みたいな騒ぎだなと他人事のように思う。
反対に背中に感じる熱は徐々に痛みに変わっていく。
刺されて崩れ落ちた私の身体をクリフ様が抱きとめる。
「楓、かえでっ。どうしてこんなーー」
私は徐々に強くなる痛みを堪え、私の身体を支えるクリフ様の腕をぎゅっと握り返して視線を上げた。
「ク、クリフさま、お怪我はーーないです、か」
「かえでっ!」クリフ様の綺麗な赤い瞳がゆらゆらと揺れている。
「わ、わたしは、だ、いじょうぶです。しんぱいし、ないで」



