「ヘッドハンティングじゃないのなら何でしょうね・・・」

結局話はそこに戻るのだ。

「クリフォード様は何者なんでしょうか」

「この国のバスルームのことを詳しく知りたいと仰るだけで他には何も教えて下さらないの。素性とかその辺りのことは所長も知らないみたい。もしかしたら社長ですら知らされていないのかもね」

「始めの時に同行してきたっていう政府関係者はどんな方々だったんですか?」

「それが外務省と内閣官房室付き役人だったの」

うーん。
結局、他国のVIPだということ以外なにもわからない。

今日はミスト付き浴室体験も短時間で終わらせ、私の話をしていたというのだから、余計に訳がわからない。

「そういえば、クロフォード様の髪は漆黒、秘書さんは金髪。護衛の方は群青と茶髪。全員髪の色が違うんですよね」

「青髪といえばかなり北の地域の国だと記憶しているのだけど、その中でも群青の方々はかなり身分の高い貴族だったはずよね。そんな方々が誰かの護衛という仕事に就くなんて聞いたことがないの」

「北の地方で漆黒の髪を持つ人の話も聞いたことがないですし」

「というか、そもそも漆黒の髪なんてものを初めて見たわ」

そうなのだ。
私やシェリルさんの住むこの国の人の髪の毛の色はわりと濃い色が多いけれど、茶褐色だったり、緑がかった色だったりと誰一人として本当の意味での漆黒の髪の人間はいないのだ。

「不思議な話よね」

「漆黒だなんて天上界の方しか思い付きませんよ」
あはははは
と笑って見たが・・・え、まさか。
二人で顔を見合わせる。

「まさかね、それはないでしょう。天上人がいるというのも神話なのだからね」
うん、うんとまた二人で頷いた。

ない、ない。
神話では天上界には漆黒の髪に深紅の瞳を持つ王様がいてこの世界の創生に関わっていると言われている。