結局、シェリルさんがデスクに戻ってきたのは終業時間ギリギリの頃だった。
まさか今までクリフォード様ご一行のお世話をしていたのだろうか。

彼女は戻って来るなり私の顔をちらりとも見ないで肩を掴んできた。

「飲みに行くわよ」
と有無を言わさず今夜の私の予定が決まったのだった。


****

お酒は弱い方ではないけれど、強い方でもない。
というより彼女より強う人の方が少ないんだと思う。

結果、私は何もかもシェリルさんに喋らされていたのだ。
だって仕方ないと思う。本当に酒豪の上に話し上手なのだ、彼女は。

散々喋らされた挙句、私の得た情報は微々たるものだった。
優秀な営業レディーのシェリルさんでもクリフォード様とその秘書様の壁は壊せなかったのだと言う。

「あれからあなたのことをいろいろと聞かれたわ。こちらも条件を付けて答えようとしたんだけど、上手にはぐらかされてしまうのよ」

「私のことってどんなことでしょう」

「出身地に関しては特に気になっていたみたい。あなた地元はここだったわよね。幼稚園から大学までずっとここだって言ってたもの」

「はい」
ただ、公表はしていないが両親の出身地はここではない。というかこの国じゃない。

「他にはどんな?」

「どんな仕事をしているのかとかって仕事の内容が中心だったわ。そう言えば、独身かとか恋人はいるのかとかは聞かれなかったわね。・・・ヘッドハンティングなのかしら」

「まさか。ヘッドハンティングなら私なんかよりシェリルさんでしょう」

「うん、私もそう思うけど」
シェリルさんの口から実に率直なお答えが返ってきた。