「楓」
クリフ様が私をひよこちゃんごと抱きしめる。

「すまない、楓。こんなことになるとは思ってなかった。警戒はしていたのに、まさかここまでのことを仕掛けてくるとは思わなかったんだ。悪かった。こんな危険な目に遭わせてしまって」

クリフ様の腕に力が入り、しっかりと抱かれる。
でも、その震える声に私は返事をすることができなかった。

本当に危ない所だったのだ。
しばらくお互いに言葉を交わすことができず、ただ黙って抱き合っていた。

やがて顔の影がかかり上空に何かが飛来したことに気が付いて顔を上げると、何匹かの竜が旋回していた。

「迎えが来た。だが、どうやらここは神鳥の領域で特別な結界が張ってあるらしいな。リクハルド達が中に入れないでいる」

クリフ様は私に抱かれてこんな状況でもウトウトしているひよこちゃんを見つめている。

ーー神鳥の結界ーー

この子が神の使いの鳥だと言うのか。
平気でお腹を出して抱かれて眠るようなひよこなのだけど。

私の耳にもバサバサッと竜の翼の羽ばたく音が聞こえる。
リクハルドさんたちはここから早く出て来て欲しいのだろう。
でも・・・。