神鳥がゆっくりと大きく旋回するように減速していくと眼下にハーピアの草原が見えてくる。
でも、ここは宮殿の中庭ではない。

どこか違う雲の島にあるハーピアの草原なのか見渡す限り草原しか見えない。

鳥は大きく羽ばたくとハーピアの中にゆっくりと下りたち身体をかがめてくれたのでクリフ様に抱かれたまま神鳥の背から下り、やっと空中という不安定な場所から解放されることができた。

レモンイエローの大きな鳥は首を持ち上げ馬のように嘶くと、みるみるうちにしぼんでいき、やがて私が知っているひよこちゃんが現れた。

え、ホントに?

「ひよこちゃん?」

私はその姿に驚き、クリフ様の腕から抜け出そうとしたけれど、きつく抱きしめられていて身動きが取れない。

反対にひよこちゃんがぴいぴいと鳴きながら私の胸に飛び込んできた。

「ひよこちゃん、助けてくれてありがとう」
頬の下のくちばしの横を撫でると気持ちよさそうにそうに目を細めている。

クリフ様とこの子のおかげで助かったんだ・・・急に悪寒に襲われ身体が震えだした。
あのまま落ちていたらーーー

宮殿のテラスから身を乗り出した時のことを思い出す。
あの時感じた恐怖感など比較にならないほどの恐怖を味わった。