ーーーかえーーでーーーかえでーー目をあけーーー

遠くで声がする。

楓。私の名を呼んでいるのは誰?

「楓」

慣れた香りに包まれて薄目を開けると目の前にクリフ様の顔があって、抱きしめられていることがわかった。

助かったのか、天に召されて夢を見ているのか…
意識が朦朧としてまた目を閉じようとすると、
「楓っ!」と悲愴な声がした。

重たい瞼を開けるとやはりクリフ様がいて、泣き出しそうな顔をしている。

「…風切り音がする」
呟くと
聞き覚えがあるピギャーという大きな鳥の鳴き声に頭の中がクリアになる。


「楓、楓」と抱き抱えながら私の名前を呼ぶクリフ様の頬に手を伸ばした。

「クリフ様」

「楓、よかった。気が付いたか」

「ええ。助けてくれたのね」

「ああそうだ。楓が叫んでいる気がしてすぐに宮殿から楓の気配が消えた。直ぐに私も窓から飛び出した。楓の身体が落ちていくのが見えた時には気が狂いそうだったよ」

泣き出しそうなクリフ様にまたピギャーと大きな鳴き声がした。

私はクリフ様に抱かれて大きな鳥の背中にいた。

またピギャーと鳴き声がする。

「この方はクリフ様の部下の方ですか?」
大きな黄色い鳥の背中の羽毛にそっと触れると鳥がギャーとまた鳴いた。

「神鳥は私の部下ではないよ。私が竜の姿で飛び出して楓を咥えたら彼が現れたんだ。背中に乗れというように身体を添わせてきたから人の形に戻って彼に乗せてもらうことにした。その方が楓を支えやすいからね」

「神鳥…?」

この手触りとレモングラスの香りはひよこちゃんのものだけど。
この大きな鳥はひよこちゃんの母鳥なんだろうか。
しかも、神の使いだったとは。