ーー私をここから落とすつもりだ。

上げられた右手ので払うような仕草をした途端、私の身体がフラフラと動き出す。

いや、やめて、窓には行きたくない。

周囲から悲鳴が上がる。
ヤナーバル様の取り巻きたちもさすがにこれはまずいと思ったのだろうか、諫める声もするけれど、誰も私の動きを止めてはくれない。

私の意思の反して身体は真っ直ぐに窓に向かっている。

いや、助けて。
助けて、クリフ様ーーー。

私の叫びは声にならず、身体の中に消えていく。

身体の自由は利かず勝手に窓枠を乗り越えようとしている。軽装だったことが災いして手を窓枠にかけひょいっと簡単に足を持ち上げて窓枠にかけた。

ーーもう、ダメ。

「さようなら、役立たずの人間の小娘」

ヤナーバル様の高笑いと幾人かの悲鳴と怒号が聞こえる。

私の身体は重力に逆らうことなく空に舞った。



落ちるーーー

このまま落下したらどうなるのかなんて当たり前すぎるほどわかっている。

助けて、助けて、助けてクリフ様と思ったのは一瞬だった。

地上に引っ張られ視界に入るのは青と白。前後左右上下などもうわからない。

気を失いかけたところで大きな咆哮が聞こえた。
何かが吠えているーーー
それが何かを確認できぬまま意識が遠のいた。