「なぜ、今日来るはずだったアリアナの侍女の代わりにミーナが来たのかはマルドネスに聞くとして・・・ミーナに何を言われたんだ?」

それは・・・

「言わないとダメでしょうか」

クリフ様から視線をそらすと、クリフ様が小さく息を吐いたようだった。

「執務室にいたヘストンからの連絡ではメイドの一人が血相を変えてやってきて、「助けてください。ミーナ姫様がいきなりやってきて楓さまにひどい暴言を吐いています。このままでは楓さまがー」と言って泣き出したそうだ。今からパメラからヘストンに詳しい報告が上がるだろう。
その報告は後で受けるが、楓も私に言いたいことがあるんじゃないか?」

さっき中庭でパメラさんからクリフ様にミーナ様が私に言ったことの一部は伝えられている。

「ミーナは昔からわがままで気が強い娘だから。あれのことは王族としてずっと気にかけていた。楓が嫌な思いをするんじゃないかと思って婚礼後まで会わせないようにしていたんだが。配慮が足りず、すまなかった」

婚礼後まで会わせないように?
では、婚礼後に”側室だ”と言って会わせようと思っていた?そういう事?
呆然としてクリフ様の顔を見つめる。

「ミーナは竜の血が濃く魔力も人一倍強い生粋の姫君だからプライドも高い。まして見た目も美しく生まれて来たから周りの評価がーーー」
「やめてください!」

私はクリフ様の言葉を遮った。

ミーナ、ミーナ、ミーナ。
血統も良く美しい竜王陛下の愛する人。
誰が好き好んで好きな男から他の女の褒め言葉を聞きたいと思うのか。

「やはり頭痛がします。少し吐き気も。しばらくベッドで寝かせていただけますか?」

もう聞きたくない。目頭を押さえ立ち上がり寝室へと歩き出した。

手を差し出したクリフ様を避けてお願いをした。

「一人で歩けます。エメかネリーを呼んでいただけますか?少し休みます」

「いや、私がつき添おう」
肩を抱き寄せようとするクリフ様にお願いではなく拒絶した。

「大丈夫ですから、クリフ様はお仕事にお戻りくださいませ」

「楓!」

その声を無視して寝室に入るとドレスのままベッドに潜り込んだ。

クリフ様は追いかけては来ず、少ししてエマとネリーが飛び込んできてドレスから部屋着への着替えを手伝ってくれた。