「楓、もう目を開けてもいい。---大丈夫か?」
眩暈に似た身体を揺すぶられる感覚に乗り物酔いか?と思ったけれど、そうではないらしい。
「胸がドキドキしますけど、たいしたことありません。大丈夫です」
二度三度と呼吸を整えて目を開けると、離れの館の応接間にいた。
これが転移魔法なのね。
宮殿では生活魔法以外の魔法を使っていいのは竜王以外は魔法省の役人、護衛、側近だけと厳しく規制されている。
その代わり、宮殿の外では規制されていないのだけれど、宮殿と離れの館だけで暮らしている私には大きな魔法を目にする機会はない。
もしかしたらクリフ様は私の目に触れないように普段はわざと使わないでいるのかもしれない。
私が今まで目にしていたのは料理人がチーズやカラメルに焦げ目をつけるために使う小さな炎や洗濯係のメイドが使う乾燥機替わりの洗濯物をちょっと揺らす風魔法程度のものだった。
離れから宮殿への移動も徒歩移動だったし、それは私が魔法を使えないからじゃなくてみんなそうしていたけれど。
魔法も頼りすぎたら筋力まで落としかねないし、転移魔法なんて高度なものはほとんどの人が使えないと言うのが理由らしい。
「いきなりで悪かった。泣いてる楓を他の者の目に触れないように移動したかったから。気分は悪くないか?」
クリフ様が私をそっとソファーに下ろした。
「一瞬眩暈がしたかと思いましたけど、大丈夫です」
ふるふると頭を振ってみたけれど、うん、大丈夫だ。
「楓には私の鱗があるから大丈夫だと思ったが」
クリフ様はそれでも心配そうに私をのぞき込んだ。
鱗ね。
そう、鱗だ。
あれは私に貼りついてどんな働きかけをしているんだろう。
あれを貼って以来、体調がいいのは間違いない。
精神にも影響を与える働きがあるのもわかっている。リラックス効果があるはずだ。
だけど、もしミーナ様の言う通り鱗によって私の恋心まで操作されているとしたら?
鱗のせいで恋だと愛だと錯覚させられているのだとしたら?
想像するだけでゾッとする。
眩暈に似た身体を揺すぶられる感覚に乗り物酔いか?と思ったけれど、そうではないらしい。
「胸がドキドキしますけど、たいしたことありません。大丈夫です」
二度三度と呼吸を整えて目を開けると、離れの館の応接間にいた。
これが転移魔法なのね。
宮殿では生活魔法以外の魔法を使っていいのは竜王以外は魔法省の役人、護衛、側近だけと厳しく規制されている。
その代わり、宮殿の外では規制されていないのだけれど、宮殿と離れの館だけで暮らしている私には大きな魔法を目にする機会はない。
もしかしたらクリフ様は私の目に触れないように普段はわざと使わないでいるのかもしれない。
私が今まで目にしていたのは料理人がチーズやカラメルに焦げ目をつけるために使う小さな炎や洗濯係のメイドが使う乾燥機替わりの洗濯物をちょっと揺らす風魔法程度のものだった。
離れから宮殿への移動も徒歩移動だったし、それは私が魔法を使えないからじゃなくてみんなそうしていたけれど。
魔法も頼りすぎたら筋力まで落としかねないし、転移魔法なんて高度なものはほとんどの人が使えないと言うのが理由らしい。
「いきなりで悪かった。泣いてる楓を他の者の目に触れないように移動したかったから。気分は悪くないか?」
クリフ様が私をそっとソファーに下ろした。
「一瞬眩暈がしたかと思いましたけど、大丈夫です」
ふるふると頭を振ってみたけれど、うん、大丈夫だ。
「楓には私の鱗があるから大丈夫だと思ったが」
クリフ様はそれでも心配そうに私をのぞき込んだ。
鱗ね。
そう、鱗だ。
あれは私に貼りついてどんな働きかけをしているんだろう。
あれを貼って以来、体調がいいのは間違いない。
精神にも影響を与える働きがあるのもわかっている。リラックス効果があるはずだ。
だけど、もしミーナ様の言う通り鱗によって私の恋心まで操作されているとしたら?
鱗のせいで恋だと愛だと錯覚させられているのだとしたら?
想像するだけでゾッとする。



