自分のことを話されているのにどこか他人の話を聞いているようなイヤな感覚だ。

「侍女の代わりにミーナが来たのはわかった。---で、ミーナは楓に何を言ったんだ。詳しく説明しろ」

その問いかけには誰もが一瞬口をつぐんだ。

私の身体がびくりと震え、繋がれた私の手にも力が入る。
リクハルドさんもパメラも他の護衛も私の様子を見て口を開かない。

「パメラ、リクハルド一体どういうことだ。お前たちが一緒にいながら、なぜ楓がこのようなことになっている」

クリフ様の怒りの口調にはっとして「クリフ様」と声を出した。

「申し訳ございません。私がミーナ様のご機嫌を損ねるようなことを申してしまったのです。
パメラさんやリクハルドさんは何も悪いことはしておりません。どうか、そのように責める言い方はしないで下さいませ」

言いながら気持ちが高まり、目頭が熱くなっていく。

「楓、私はお前もリクハルド達も責めているわけじゃない。とにかく事情が知りたいだけだから、泣くな。お前は悪くない」

クリフ様は慌てたように私を抱き寄せ背中をさすり始めた。

彼に包まれるとあの柔らかな香りがしてたまらなくなり涙が込み上げてきてしまう。泣きたくはないのに涙が止まらない。

クリフ様は困った顔をすると、私をさっと抱き上げて「楓、目を閉じてしっかりとしがみついていろ」と耳元で囁いた。

訳も分からず目を閉じてクリフ様の軍服の胸元に手を添わせると、身体にぎゅうんっとジェットコースターの重力がかかったような感覚がした。