そうして私の首すじに顔をうずめると、くんくんと私の匂いを嗅いで「甘い」と呟き、ちゅっと唇を落としたのだ。


いや、呼び方とかそんなこと今はどうでもいい。

今、この人何をした?

ふらつく足を広げて踏ん張ると、思い切りクリフォード様の胸を両手で押して腕の中から逃げ出した。

「何するんですか」

私に思い切り胸骨を押されてクリフォード様の腕の力が緩んだのだ。思いがけない反撃だったのかもしれない。

自分の腕で自分を抱きしめ彼から距離を取るように後ずさった。

自己紹介でいきなり抱きしめるとか、これ100パーセントアウトですから。

しかも、密室で二人きりの状況を作ってこんなことをするとかもはや犯罪以外の何者でもない。

クリフォード様がどこの誰だかなんて知ったことじゃない。
会社の都合も政府の都合も知ったことか。私はきっぱりと大きな声で言い放つ。

「クリフォード様、セクハラです」

その途端、ドアが勢い良く開いて「クリフォード様」と金髪秘書が駆け込んできた。

「秋月さま、誤解です」

飛び込んできた金髪秘書は真っ青な顔色をしていた。

「嘘だろ」と金髪秘書の後から部屋に入ってきた群青色の髪をした大柄な護衛男性が呆れたような薄笑いを浮かべていた。