彼が気をつかってくれているのはすぐにクリフ様と会うことができないからだ。
さっきここに向かって歩いている途中にヘインズさんの部下の男性が肩で息をするほど急いで走ってきて、ヘインズさんからの伝言を伝えてくれたのだ。

「陛下はただいま神殿に出かけておられます。連絡がつくまでしばしお待ちください」と。
それを聞いてクリフ様としばらくは話が出来ないことがわかった。

この国にとっての神殿とは特別な場所でその中に入ると出てくるまでは誰も連絡を取ることができない。
だから、たぶん執務室のどなたかがすぐに報告できるように神殿の外にいてクリフ様が出てくるのを待っていてくれるのだと思うけれど、それがいつなのかはわからない。

ただ夕食には間に合うように帰って来てくれるはずだからそんなに遅くにはならないだろうけど。

白と黄色のハーピアの上に直接すとんと腰を下ろすとお腹辺りまで草に覆われる。

葉の形はクローバーに似ているけれど、色と肌触りが全然違う。花だけでなく葉っぱもふわふわと気持ちがよくてまるでタンポポの綿毛か羽毛のようだ。

背の高い草に囲まれここで寝転がれば泣いても誰にも見られないかもしれない。

私の泣き顔を見たらリクハルドさんやパメラさんが更に困ってしまうだろうとさっきまで必死に耐えてきた涙腺が1人になると緩んでしまう。

いいや、横になってしまえ。

ごろんっと背中から寝転がり天を見上げた。
ふわふわモフモフとした葉っぱや綿毛に包まれてリクハルドさんの位置からはドレスの一部しか見えないかもしれないけど、一部が見えていれば問題ないような気がする。