「楓さま、お茶を飲んでまず落ち着きましょうか」

リクハルドさんに声をかけられパメラさんがお茶の入ったカップを私の手に握らせる。

「ありがとうございます」
ゆっくりと口に運ぶものの味を感じることができない。
温かい何かが喉の奥に流れ込んでくる、そんな感じだ。

「すぐにクリフォード様に連絡をするから、楓さまは落ち着いて。あんなバカみたいな言葉を信じてはいけないよ」
リクハルドさんの声に怒りが滲み出ている。

「楓さま、ミーナ様が帰り際に何か言っていたみたいですけど、何を言われたんですか」

どうやらミーナ様の耳打ちはパメラさんとリクハルドさんには聞こえなかったらしい。

「うーん、それね・・・」

私は言葉を濁して黙り込んだ。
二人に教えることができなかったのだ。

図星だったから。

私はクリフ様から
ーーーー愛してるとか好きだとか言われたことが・・・ない。


愛しい番
可愛らしい番
大切な番

私は彼にとって運命で決められたただの番なのかもしれない。
癒しの存在。

今思うと、彼の口からこぼれ出たそれらは愛の囁きじゃなくて全て番の説明だったんじゃーーー

身体が、本能が番の器を求めているだけで恋愛感情とは違うものなんじゃないんだろうか。