高地順応の問題がなければいいのだけど、確かに私にあの移動は負担が大きい。
高地と魔法に身体が慣れれば、転移魔法でちょちょいのちょい、だそうだからもう少しの我慢なはず。

「他に困っていることはないか」

「婚約のお披露目や婚礼は国家の儀式ですよね?その手順とか衣装とか心得とか、私にはどなたが教えて下さいますか?」

「ああ、そうだったな。・・・そうだな、本来なら私の母上や姉の役目だが母はとうの昔に亡くなったし姉は出産したばかりで都合が悪い。マルドネスの奥方も・・・つわりだったな。他に王族の女はーーー」

クリフ様は少し考える仕草をしてまた口を開いた。

「いや、やはりマルドネスの奥方に頼んでみよう」

言葉の裏に何かを感じたけれど、それが何なのかどういう意味があるのかはわからない。
お母さまが亡くなっているのは聞いていたし、まだお会いできていないけれど、クリフ様のお姉さまがラウルさんとリクハルドさんの故郷の極北の国の王に嫁がれていることも聞いて知っている。
出産したばかりでまだ療養中だそうだ。

でも、クリフ様の言葉の何かが私の心の琴線に引っかかった。
何だろう・・・。



結局、マルドネス様の奥さまのアリアナ様はやはり悪阻がひどく、起き上がるのもやっとという状態だそうで話ができないとマルドネス様から断わられてしまった。

そのかわり、とアリアナ様の侍女を紹介していただけることになった。

この国の貴族の血を引きアリアナ様が嫁がれるときに王族に嫁ぐものをサポートするための教育を受けていて一連の儀式について教えてくれると言う。