「クリフォード様、今のは一体・・・?」

私の声で我に返った彼が再び私の右手をそっと掴む。
今度は電気が走るような感覚はないけれど、掴まれたそこから温かい体温がじわじわと伝わりゆっくりとではあるけれどじんじんとしてくる。

こんな感覚は初めて。

そして近くにいるクリフォード様からはとてもいい香りがする。
それはあの不思議な鱗のようなものから漂う香りと同質なものだ。
あれはクリフォード様の香りだったんだ。

気が付くと恥ずかしくなってくる。昨日から何度もこの香りが心地良くて深く吸い込んでいたからだ。

まさか男性の香りだったなんてーーーー。

今まで嗅いだことのない匂いだったのだ。

これがフェロモンってものなのかしら。
でも、シェリルさんをはじめ他の人たちはこの香りを感じなかったらしい。不思議なこともあるものだ。


ふと繋がれた右手の力が強くなり、私の背中に彼の右手が回され気が付いたらクリフォード様の胸の中に囚われていた。

ひゅっと息をのむとあの香りが強くなる。
深く濃い香りにクラっとする。

「ク、クリフォード様」

やっとの思いで声を出すと、
「クリフだ。クリフと呼んで欲しい、楓」
私に覆いかぶさるように抱きしめているクリフォード様の声が耳元でした。