「まぁ、感謝してるよ?」

愛梨の顎に手を添えながら、とりあえず奴の方を向いて言う。


そりゃぁそうだよ。


自分の彼女が危ない目に合って…それを助けてくれたのが例えどんなに気に喰わなくて存在さえも許せない人間でも。


百歩譲ってそれが人間じゃ無くても。

いちいち俺に突っかかってくる人間とは思えないような奴でも。



それは仕方ないし、感謝はするよ。


こんな俺でも……まぁ、そりゃ。



「嘘だろ!してねぇだろお前ッ!!!」

「いや、してる」

棒読みで返すと、それが勘に触ったのか…奴は歯ぎしりらしき行動に出た。



あーあ。

そんなにしたら歯が削れちゃうよ…



「…ていうかさ、アンタ元の女と上手くいったんじゃなかったっけ?」


そうそう。

結局あの後の話。


あれだけ迷惑を掛けた挙句、コイツは昔の女といい感じになったらしいことを俺が愛梨から聞いてたし…

だったら早く帰ればいいのに。


「何で帰らない訳?」

「…そんなに帰って欲しいのかよ、お前……」

やっぱり苛立ったように奴は言う。