そのまま小説の文字に想いを乗せた。


「……いつき?」

呼び掛けに応えない俺に不安を感じたのか、さっきまでの膨れっ面は何処へやら。
急に自信に遠ざかる、弱気な声が耳に入る。


「ねぇ…?……怒ってるの?」

今はきっと愛梨からどんな言葉を言われても何をされても、この苛立ちのような渦はきっと抑えられない。


「あのさぁ…」

本の間に指を挟み、ジロリと睨み付ける様に愛梨を見れば……


それだけで愛梨の表情は強張る。


「何なの?」

「…え?」


どんどん湧きあがってくるこの苛立ち。


どうしようもない。

どうしようも、止められない。


「俺に何を求めてる訳?愛梨は何がしたい訳?」

淡々と並べられるのは、鋭く先の尖る言葉の数々。


分かってる。


こんな事を言えば愛梨がどんな気持ちになって、きっと…きっと泣きだすってことも分かってる。

けど、どうしようもないから。



分かってる。


鈍感で計算とか、駆け引きなんて出来ない愛梨だから。


その相手の女の気持ちとか…アイツの隠れて見えない本当の気持ちとか、そういうのを考えたら何かしてあげたい。

そう思ったんだと思う。


けど考えてほしい。





俺の気持ち。