「知らない」

と相変わらず無愛想な樹。


するとハァッと困ったように美菜が重く深い溜め息を吐いた。

「あの、白井くん?…相当、手強そうだよ」


手強い…?

そう思うあたしの心を代弁するように、翔太くんが割って入る。


「…あーね、女慣れしてそうだし、それに……」

少し表情を曇らせて、翔太くんがチラッと樹の方を見る。

けど、樹は屋上のフェンスに寄りかかりながら、ボーっと空を見たり…どこか心此処に有らずな感じ。


「それに…って?」

気になってその翔太くんのに視線を向けて聞いてみる。


そして少し笑いを含む笑みを向けてから、

「心配なんだよね、愛ちゃんみたいなタイプは……本当、」

と少し口の先を尖らせて言った。


「そうそう、……愛梨は本当、押しに弱いし?ドMだし」

「ド、ド…っ!?」


美菜の言葉に急に顔がカッと熱を帯びて、赤くなっていくのが分かる。


「それよ、それ」

するとそのあたしの頬を、美菜は人差し指で突く。


「そいうのが、また可愛かったりしちゃうんだよ、ね…?いっちゃん??」

すると興味無さそうに樹はハァーッと長い溜め息を吐きだした。


そして、嫌そうにあたし達を見ると、

「知らない」

と、また短くだけそう言った。