気がつくと俺はサラサラとしたシーツの上に寝ていた。騒々しい機械の音も人の話し声もしない。聞こえるのは近くを走っているであろう車の走行音と、雀や名前も知らない野鳥達のさえずりだけだ。
吸い込む空気には、独特の薬品の臭いが混じっていることからどうやらここは病院らしいという事が分かった。
「あっ!!母さん、父さんが起きたよ!!」
「あぁ、良かった…貴方、気分はどう?」
誰も居ないと思っていたが2人は病室にいたらしい。少し動揺しながら2人に声をかける。
「俊介…奏恵。心配かけてゴメンな。」
2人を両の目で映す事が出来ないのがもどかしい。そう思っていると病室の扉を開く音と、少し前にも聞いたような声が聞こえた。
「高橋さん、おはようございます。」
「おはようございます。…事故の直後はお世話になりました。」
「いえいえ、仕事ですから。これから少しずつでも回復できるように先生と一緒に精一杯サポートしますね。…あ、私看護師の山口 里美と言います。」
と、またしてもはっきりとした口調で答えた後、自分の名前を付け加えた。
「はい、よろしくお願いします。」
「それから…悪い知らせばかりで申し訳ないのですが、奥様とお子さんのことで…事故でお二人は天国へ旅立たれました。」
「…は?それは、どういう…だって、2人はここに…」
「こういう時、精神が不安定になって幻聴や幻覚に悩まされる患者さんは沢山います…ゆっくりでいいので気持ちの整理をつけて行きましょう。」
そう言い残して山口さんは去っていった。
(どういうことだ?だってさっきまで2人の声が聞こえていたのに…あれが幻聴なのか?あんなにはっきり聞こえるものなのか?)
__2人が死んでいるなんてありえない。そんなこと、信じたくない。
「俊介、奏恵?そこにいるのか?」
恐る恐る尋ねてみると
「いるよ。」「えぇ。」
2人の声は聞こえるが、山口さんの言っていることが正しければこれは幻聴と言うことになる。
あぁ、目さえ見えれば!!
「あのね、山口さんの言ってた事はホントよ。」
もどかしさと疑心で頭の中がぐちゃぐちゃになっていると奏恵の声が聞こえた。
「じゃあ、どういうことなんだ?…幻聴なのか?」
「いいえ!…なんて言ったらいいのかしら…私と、俊介は確かにここにいるわ。でも、体がないっていうか…うーん。」
奏恵の困惑しているらしい声が聞こえて、食い気味に俊介の声が被さる。
「だから!僕達はユーレイになっちゃったんだよ!!そーじゃなきゃ、誰にも見えてないなんておかしいよ!」
「でも、幽霊なんて…そんなこと…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俊介、幽霊って…なんでそう思うんだ?」
「僕と母さんのこと誰にも見えてないみたいなんだ!!だからしょうがなく父さんにずっと着いてきてたんだけど、触っても…ほら、すり抜けちゃうし。」
一瞬ゾクッとした感覚に襲われ身震いする。
「うーん…詳しいことはよく分からないけどこれは幻聴じゃない…のか?」
「「当たり前でしょ!!」」
2人が息を揃えて言った。俊介は俺に顔は似ていて、いつもは奏恵とは真逆の性格や考え方なのにどこか奏恵に似ている思考回路をしていてこうやってよくハモることがあった。
事故前の家での光景を思い出して少し笑った。
自分は視力を失い、家族は幽霊になるという状況に色々追いついていないが、声だけでも家族の存在が近くに感じられるのは俺を安心させてくれた。
吸い込む空気には、独特の薬品の臭いが混じっていることからどうやらここは病院らしいという事が分かった。
「あっ!!母さん、父さんが起きたよ!!」
「あぁ、良かった…貴方、気分はどう?」
誰も居ないと思っていたが2人は病室にいたらしい。少し動揺しながら2人に声をかける。
「俊介…奏恵。心配かけてゴメンな。」
2人を両の目で映す事が出来ないのがもどかしい。そう思っていると病室の扉を開く音と、少し前にも聞いたような声が聞こえた。
「高橋さん、おはようございます。」
「おはようございます。…事故の直後はお世話になりました。」
「いえいえ、仕事ですから。これから少しずつでも回復できるように先生と一緒に精一杯サポートしますね。…あ、私看護師の山口 里美と言います。」
と、またしてもはっきりとした口調で答えた後、自分の名前を付け加えた。
「はい、よろしくお願いします。」
「それから…悪い知らせばかりで申し訳ないのですが、奥様とお子さんのことで…事故でお二人は天国へ旅立たれました。」
「…は?それは、どういう…だって、2人はここに…」
「こういう時、精神が不安定になって幻聴や幻覚に悩まされる患者さんは沢山います…ゆっくりでいいので気持ちの整理をつけて行きましょう。」
そう言い残して山口さんは去っていった。
(どういうことだ?だってさっきまで2人の声が聞こえていたのに…あれが幻聴なのか?あんなにはっきり聞こえるものなのか?)
__2人が死んでいるなんてありえない。そんなこと、信じたくない。
「俊介、奏恵?そこにいるのか?」
恐る恐る尋ねてみると
「いるよ。」「えぇ。」
2人の声は聞こえるが、山口さんの言っていることが正しければこれは幻聴と言うことになる。
あぁ、目さえ見えれば!!
「あのね、山口さんの言ってた事はホントよ。」
もどかしさと疑心で頭の中がぐちゃぐちゃになっていると奏恵の声が聞こえた。
「じゃあ、どういうことなんだ?…幻聴なのか?」
「いいえ!…なんて言ったらいいのかしら…私と、俊介は確かにここにいるわ。でも、体がないっていうか…うーん。」
奏恵の困惑しているらしい声が聞こえて、食い気味に俊介の声が被さる。
「だから!僕達はユーレイになっちゃったんだよ!!そーじゃなきゃ、誰にも見えてないなんておかしいよ!」
「でも、幽霊なんて…そんなこと…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俊介、幽霊って…なんでそう思うんだ?」
「僕と母さんのこと誰にも見えてないみたいなんだ!!だからしょうがなく父さんにずっと着いてきてたんだけど、触っても…ほら、すり抜けちゃうし。」
一瞬ゾクッとした感覚に襲われ身震いする。
「うーん…詳しいことはよく分からないけどこれは幻聴じゃない…のか?」
「「当たり前でしょ!!」」
2人が息を揃えて言った。俊介は俺に顔は似ていて、いつもは奏恵とは真逆の性格や考え方なのにどこか奏恵に似ている思考回路をしていてこうやってよくハモることがあった。
事故前の家での光景を思い出して少し笑った。
自分は視力を失い、家族は幽霊になるという状況に色々追いついていないが、声だけでも家族の存在が近くに感じられるのは俺を安心させてくれた。