「あ、ありがとうございました。本当に」
「いえいえ、お気になさらず〜」

恥ずかしさを隠しきれずお礼を述べたものの、青年が去って行く気配が無い。

にこにこと口元だけは笑っていることが読み取れるが、もしかしてこれは、何か物的お礼を所望されているのか、それとも身体的なお礼をご所望か!?!

焦る私に気付いた青年はとても不思議そうな顔をしている!!否!不思議なのは私なのだが!!

「あの、ほんと、ありがとうございました。それでは!失礼しますね!!」
「あっ、ちょっと待ってください。これから予定ありますか?」
「はい??」

ホテルへ入ろうと振り向いた所で、青年は私を引き止めたようだった。

私には、何故彼が私を引き止めたのか理解できず、唖然としたが、反射的に聞き返してしまった。

「いや、お暇ならせっかくですし…案内とかどうですか?迷惑ですかね……」

そりゃ時間は有り余っているし、観光地を回ろうとは思っていた。
しかし、目的地に辿り着ける自信は無かった、なので青年の申し出はとてもありがたい話なのだが…

「こちらこそご迷惑では無いですか、今日のご予定とかあったんじゃ…」
「あぁ、全然大丈夫ですよ。暇で散歩してたぐらいですし」

とんだ裏道散歩ですね。なんて言えはしないが、ここは頼んだ方が良い気がしてきたな、方向音痴が炸裂してまた迷子になりかねない。

「あっ、少し穴場的なところ好きですか?僕人混みが苦手で、そういう場所ならご紹介できると思います。」

「穴場!そういうの大好きです!!是非お願いします!!」

たびたび旅行ではそういう場所を探し歩くことを楽しみにしている私は、穴場という言葉に弱い。
探すというか、迷った末に行き着く場合が多いことは少し黙っておくとして、案内してくれるというならこの話乗るしかないでしょう!
行きましょう!穴場!

「ふっ、行きましょう!穴場!」

声に出てしまっていたらしく、青年に笑われてしまいました。お恥ずかしい。