「それで結局なんで帰っちゃったんですか?」
「いやぁ私のせいで推しがスキャンダルなんてことになったら耐えられなくて」
イタイイタイ。視線が痛い。
「僕のためを思ってくださるのはありがたいですが、それこそ僕に話して欲しかったです。」
「とても不服と言わんとする表情はありがたいことこの上無いのですが、話せるわけが無いですよね.....」
と口から出そうになる悪態をギリギリで呑み込み
「ご、めんね?」
などという軽く躓いた謝罪しか出なかった。
夕暮れを過ぎた海辺は薄暗く、フラフラ歩く男女が居ても顔の判断は難しい。
とはいえ、隣の推しに気付くような人がいないとも言いきれないので持っていた自分の帽子を柊さんに手渡し
「どうしてここが分かったんですか?」
と気になっていたことを尋ねてみる。
すると急に柊さんの視線が波から離れなくなり、聞こえるか聞こえないかの声で
「たまたま......」
「たまたま?絶対嘘ですよね」
視線が合わなくなった柊さんを、問い詰めてみると呆気なく白状してくれた。
「宮古さんのSNSを探しました。僕のファンだということと、観に来てくれた公演もわかってましたし」
「それで見つけたの!?」
私の恐れ多くも見られる想定のしていない推し語りし放題SNSを!?
「ん〜見つけはしたんですけど、見れなかったので」
私はホテルからの帰りにSNSは非公開にしていた。
そして携帯の電源も切っていたので、見られるはずは無い。
ならどうして?
「宮古さん同じ名前で写真がメインのSNSありますよね?そっちで色々情報を探しました」
.....ある。
たしかに、あった。
昔TLを写真で埋めるのは悪いと思って作った日常写真用アカウント
たしかに写真を整理するのも載せる写真を選ぶのも面倒くさくなり、もうしばらく放置していたからアカウントの存在すら忘れていた。
「でも宮古さんほとんど出かけた先の写真ばかりでなかなか何処にいるかはわからなくて」
そりゃ見てる人は少ないとはいえ、リテラシー的に生活圏の写真はできるだけ載せないようにしていたから...
「たまたま宮古さんのSNSのフレンドさんが『前回はこっち来てもらったから今回は宮古さんのとこ来た!』という内容のものを投稿していて、そこから重点的に」
探した。そして見つけたと。
執念がすごい。
必死にスマホやらパソコンやらで私のSNSとにらめっこする姿を思い浮かべて、さらに心が痛かったが
「一歩間違えたら特定厨ストーカーなんですよね。」
そう思っていたことは何年か経ってから伝えることにした。
「僕からしたら行方不明者探しだったから」
と後に彼は語るのだった.......


