「お付き合いしてください」
ずっと貴方を見てきたはずなのに
私の特等席、隣の彼にこの胸の響きが届かないことを必死に願う。
柊さんの言葉を掻き消す力が無い自動販売機の稼働音ではどうしようも無いくらい、私の鼓動はなにもかも呑み込むかのように耳の奥で響く。
目の前に立つ『推し』は
私が知らなかった『推し』
「.....私柊くんのオタクだよ。」
「うん」
「迷惑かけちゃうかも」
「俺も我慢させてしまうこと多いと思います」
「方向音痴だし」
「そのおかげで出会えました」
「......私で良いんですか」
絞り出した音に、柊さんが首を振る
「宮古さんが良いんです」


