「宮古さんは、ほんとずるい」
そう言いながら不服の表情を見せる柊さんを眺めながら私は『眉を寄せて怒る推しも可愛いなぁ』なんてのんきに考えていた。
「僕がどれだけ宮古さんを必死に探して、どんな思いで声をかけたか。絶対僕から言いたかったのに」
「……すみません」
苦笑いで苦しまぎれの謝罪をすると
も〜、と言いつつちゃんと続きを話してくれる柊さん。
心做しか表情が和らいでいるような気がして安堵する。
「やっと当たって砕けてやろうと思って、声をかけようとしたら。千秋楽観たかったなぁ、なんて言われて。そりゃじゃあ観に来てくださいよ!どうしていなくなったんですか!って思いますよね」
おっしゃる通りで。
「……先に言われちゃいましたけど」
一呼吸おいて、私と視線を合わせる柊さん
瞳に映っているのは私だけ
落ち着いた呼吸音は風にさらわれて
「僕と」


