待って、もう会うことは無いんじゃないかな…?

今日だって柊さんは舞台に立っているはず、このまま地元に帰れば何も無かったことに出来やしないか。


そう、柊さんもたまたま道案内しただけ。

私もたまたま道案内されただけ。


自分の意気地ないところに嫌気はさすが、そうしなければ、あの楽しかった道さえも思い出すことをやめてしまいそうだった。



大丈夫。

このまま無かったことに……。



私が推すことをやめればいい。


たったそれだけのことよ。




そう思い立った私は、急いでホテルを出た。


今、舞台は昼公演の時間。

今なら確実に柊さんは舞台の上だ。


今だ。

今帰るんだ。


もう迷惑をかけない。



私は新幹線へ足を踏み入れた。