【完】俺の隣にいてほしい。

可愛らしい声がすると同時に手に持っていたスマホから目を離し顔を上げたら、そこには小柄な彼女が上目遣いでこちらを見上げながら立っていた。


こうやって会うとまだ少し緊張しているようにも見えるけど、最初の頃よりはだいぶ俺に対して気を許してくれるようになったような気がする。


会えて嬉しい気持ちが思いきり顔に出そうになるのをこらえながら、なるべく平静を装って答えた。


「お疲れ」


心音の隣に並んで、そっと彼女の手を握り、指を絡ませる。するとその瞬間、心音がハッとした顔で俺を見た。


急に顔を真っ赤にさせて、明らかに照れているように見えるその姿はめちゃくちゃ可愛い。


ゲーセンで初めて手を繋いだ時もそうだったけど、心音は反応がいちいち初々しくて、マジで男慣れしてないのがわかる。


恥ずかしいから照れてるだけなのはわかってるけど、少しでも俺にドキドキしてくれてたらいいのに、なんて思ってしまう。


「今日、どっか行きたいとこある?」


俺が尋ねたら、彼女はいつものように「どこでもいいよ。椿くんの行きたいところで」と答えた。


こんなふうに心音が何もリクエストしないのはわかってるから、実は前もって今日どこに行くかは考えてあったりする。


どうしたら心音が喜んでくれるのかとか、楽しんでくれるのかとか、毎日そんなことを一生懸命考えてる俺は、すでに相当彼女にハマっているような気がする。