まさか、私の帰り道のことまで気にかけてくれるなんて思わなかったので、ビックリした。


でも、さすがに最寄り駅が違うのに、家まで送ってもらうなんてことはできない。


「だ、大丈夫だよっ、全然! うち、駅から近いし」


「そっか。でも、危ねぇから気を付けて帰れよ」


「ありがとう」


そんなふうに言ってくれる彼は、一体どこまでいい人なんだろうと思ってしまう。


私ったら椿くんのことを、見た目のイメージだけで勝手に怖いって決めつけて、誤解していただけなのかな。


そうだったらなんだか申し訳ないなぁ……。


『まもなく、南桜田~、南桜田に到着いたします』


すると、その時ちょうど次の駅到着のアナウンスが流れて、電車がゆっくりと停止した。


南桜田駅は椿くんの家の最寄り駅なので、ここでお別れだ。


「じゃあ俺、降りるから」


そう言われて、小さく手を振る私。


「あ、うん。それじゃ……」


するとその瞬間、頭の上にポンと椿くんの大きな手が触れて。


驚いて見上げると、私を見下ろす彼と目が合った。


「またな、心音」