【完】俺の隣にいてほしい。

耳元で聞こえる椿くんの声が、少し震えている。


「ダメなわけ、あるかよ」


「えっ……?」


「俺だって、心音が好きだ。一緒にいたいに決まってんだろ」


その言葉を聞いた瞬間、目頭がじわっと熱くなった。


ウソ……。ウソでしょ。


本当なの?


椿くんが、私のことを、好き……?


なにそれ。信じられないよ。


どうしよう。嬉しくて涙が止まらない。


夢みたい。


「ほ……本当?」


椿くんの腕の中で泣きながら聞き返すと、静かに彼が頷く。


「あぁ。女よけなんて言ったのも、ほんとはそんなのただの口実だったんだよ」


「えっ……」


口実? どういう意味?


「きっかけが欲しかっただけで。ほんとは俺、ずっと前から心音のことが好きだった」


「えぇっ?」