【完】俺の隣にいてほしい。

サーッと一気に人が引いていくのをみて、あっけにとられる私。


ウソ、すごい。なんで……。


椿くんってやっぱり、学校ではけっこう名前が知られてるのかな?


今のまるで、みんな椿くんを恐れてるみたいに見えたのは、気のせい?


「おい心音、大丈夫だったか?」


するとそこで、椿くんが焦ったように声をかけてくる。


「う、うん。あの、ありがとう、椿くん」


私が何から伝えようと思いながらもとりあえずお礼を言ったら、彼はホッとしたようにため息をついた。


「いや、マジでビックリした。こんなとこで何してんだよ。うちの学校なんか一人で来たら危ねぇぞ。女に飢えてる奴ばっかだし」


心配したようにそう言ってくれる椿くんは、変わらず優しい。


今だって、困ってる私のことを見つけて助けてくれたし。


顔を見ただけで、どんどん気持ちがあふれてくる。


どうしよう。


「だって……椿くんに会いたかったから」


私がボソッとそう告げたら、椿くんは驚いたように目を丸くした。


「えっ?」


「会いたかった……」