「あぁ。早めに来て待ってたんだよ」


「ありがとう。ごめんね、待たせちゃって」


「いいんだよ。俺が早く来たかっただけだし」


そんなふうに言われると、嬉しくて顔が緩んでしまう。


まるで、早く会いたかったみたいに聞こえるのは、気のせい?


「つーか、なんか今日の心音、いつもと雰囲気違うな」


「そ、そうかな?」


椿くんに急にじっと見つめられ、恥ずかしくなる。


どうしよう。変だったかな。


「うん。すげぇ可愛いからドキッとした」


「えぇっ」


思いがけないことを言われて、逆に私のほうがドキッとしてしまった。


そんなこと言われたら私、ますますうぬぼれてしまいそうになるよ。


でも、頑張ってオシャレしてきてよかったなぁ。


「……あ、ありがとうっ。椿くんもカッコいいよっ。いつもだけど」


照れながら自分も彼のことをほめ返したら、椿くんがニコッと笑って、それから私の隣に並んだ。


さりげなくギュッと手を繋がれ、またドキンと心臓が跳ねる。


「サンキュ。それじゃ、さっそく行くか」


「うんっ」


そのまま椿くんに手を引かれ、ふたりで改札へと歩いていく。


そして私たちは目的地の動物園に向かうため一緒に電車に乗った。



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