その瞬間、まるで息が止まったかのように、胸が苦しくなる。


ウソだろ。さっき一緒にいたのって……氷上のことだよな?


じゃあ、やっぱり……。


「そうなんだ!? キャーッ!」


「えっ、一緒にいた人って誰? 私見てない!」


「ウソッ、超イケメンだったよ~」


「ねぇねぇ、どんな人?」


キャッキャと騒ぐ女子達に質問され、恥ずかしそうに答える心音。


「え、えっとね……すごく優しい人だよ」


「どういうところが好きなの?」


「好きなところは、えっと……あったかくて、思いやりがあるところかなぁ」


なんて、照れたように語る心音の声を聞いて、また胸がギュッと締め付けられる。


優しくて、あったかい? 思いやりがある?


それってどう考えても、あいつだよな。


今の会話のどれを聞いても、あてはまるのはあいつ……。あの氷上って男以外に考えられない。


俺の中でグレーだったはずの嫌な予感が、確信の黒へと変わった瞬間だった。