【完】俺の隣にいてほしい。

椿くんの家は、南桜田駅から徒歩5分くらいの場所にある5階建てのマンションの一室だった。


――ガチャッ。


玄関のカギを開けると、ササッと靴を脱ぎ、家にあがる椿くん。それに続くように自分も靴を脱いで中に入る。


「お、お邪魔します……っ」


ガチガチに固まった私を見て、椿くんがクスッと笑う。


「そんな緊張すんなって。大丈夫。親仕事だし、弟も部活だし、今は誰もいねぇから」


「えっ……!」


その言葉は、ますます私の緊張感を増幅させた。


だって、誰もいないって、家にふたりきりってことだよね?


親御さんとかに気を使わなくていいのはありがたいけれど、それはまた別の意味で緊張するよ……。っていうか、椿くん弟がいたんだなぁ。知らなかった。


そのまま廊下を通ってリビングに案内された私は、椿くんに言われるがままカバンを床に置き、ソファーにちょこんと腰を下ろした。


思わず部屋の中をキョロキョロ見てしまう。椿くんの家って、こんな感じなんだ。


なんか、全体的にシンプルっていうか、余計なものが置かれてない感じのスッキリした部屋だなぁ。